貯金をしない?現金払いに限度額?イタリアのちょっと意外な経済状況
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海外に出かけるとき、用意するべきものといえばクレジットカード。
私も海外へ行くときは、必要以上に日本円を現地通貨に両替して、後で損をしないよう支払いはできるだけクレジットカードで行っています。
アメリカではキャッシュレス化が進んでいて、ニューヨーカーはカードが入った小さな財布しか持ち歩かないという話を耳にしたことがあるのですが、 他の国もそんな感じなのでしょうか。
漠然とそんなことを考えていたのですが、先日5年間のイタリア駐在から帰国した友人と会う機会があり、ちょっと意外なイタリア人の金銭感覚について色々話を聞いたのでここでシェアしてみたいと思います。
イタリア人の意外な経済状況
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月収は意外に少ないけど満足度は高め?
一般的な月収ですが1,500ユーロもらっていれば、いい方なんだそう。今、1ユーロ127円くらいですから、日本円にすると20万円いかないくらいですね。
ボーナスは年に1回あればいいほうで、1か月分上乗せされて支払われるのが一般的。でも、ボーナスがないという人も多いのだとか。
そもそもイタリア人労働者の多くが個人事業主か中小企業に勤めている労働者。日本で言うトヨタや日産のような大企業に勤めているような人というのは、ごくわずかしかいません。
イタリア人の知り合いから「今月まで給料が支払われてないよ」「もう2カ月無給で働いている」なんて言われることが、日常茶飯事だったそうです。
また、夫婦揃って正社員という家庭は大都市を除いて、あまり多くないんだとか。これは日本も同じですかね。たいていはどちらかがパートなどの非正規採用。世帯の月収は2,000~2,500ユーロあれば、かなり余裕のある家庭であると言えるみたいです。
でも、実際に生活してみると「日本人のような悲壮感は感じない」のだとか。イタリア人らしく、人生を謳歌しているんじゃないの?というと、こんな答えが返ってきました。
「いや、それだけじゃなくて税金を納めずに人を雇ったり、働いたりしている違法行為が横行していることもあるんじゃないかな。若い子なんかは、雇用契約をしてもらえず雇主の財布から直接、給料をもらっているような子が多かった。妻がひどいアレルギーで皮膚科にかかったとき、保険の請求のために領収証が欲しいと医師にいったら『領収証がいるなら300ユーロ、領収証なしなら90ユーロ』と言われたくらいだからね」
これは、いわゆる地下経済というやつですね。
結婚しても親に頼っている人が多い
でも、月収1,500ユーロじゃあ、家なんて持てないよね?と思いますよね。確かにその通りで、イタリア人の夫婦は結婚するとどちらかの親と同居して同じ敷地内に家を建ててもらったり、昔購入した広い家に一緒に住まわせてもらうことが多いんだそうです。
後はなぜか電気代や水道光熱費や親が払っている、とか。
なので、親の後ろ盾がない人は本当に大変な思いをしているそうです。家賃は日本より少し安いくらいですが、車社会であり大人の人数分だけ車が必要であるため、毎月の出費もそれなり。
今の20~30代の収入で自力で家を買えるとしたら、医師や弁護士とか特殊な高収入の職業についていない限り無理なんじゃないかというのが友達の意見でした。
失業率40%?若い世代の将来が見えないイタリア
なんとか人生を謳歌しているように見えても、将来を見据えるとのんきなことばかりは言っていられない経済状況であるイタリア。
15~24歳の失業率は、なんと40%というのですから驚きです。
友人の行きつけのバールに大学の医学部に通っている女の子がよく来ていて、彼女から聞いた話なのだそうですが、医学部を出て医師になっても就職口がすぐに見つからないのだとか。
聞けばイタリアの健康保険制度というのはムッソリーニ時代に作られたもので、ちょっと変わっていて、保険証を持っていると無料で治療が受けられるらしいのです。うらやましいですね。
でもデメリットもあるらしく、保険を使って治療が受けられる大きな国立病院は町に1件ずつしかないのが基本なので、待ち時間がとにかく長いのだとか。
ちょっと話がずれましたが、何が言いたいかというと医師のポストが少ないということ。
医学部を出て、医師になっても自分の親が開業医でない限り、数の少ない国立病院のポストを目指して就職活動をしなければならないため、医師になったはいいけれど働き口がないということも多々あるようです。
その女の子は「私は親がクリニックを経営しているからいいんだけど、友達は就職口がないって嘆いてる。友達を雇ってもらえないか、親に相談しているところなの」と言っていたそう。
高齢化が進んでいる日本からしてみれば、若い医師が余っているなんてちょっと信じられないですよね。イタリアも同じように高齢化が進んでいるというのに、意外でした。
将来への備えをしない?イタリア人
友人がイタリア生活で驚いたことのひとつとして力説していたのがイタリア人は貯金をしない人が多いということでした。
子供がいる人や家を修復(あえてリフォームとは言わず(笑))するなど差し迫った予定や確固たる目的がある人などは除き、将来に備えて月々いくらという貯金をしている人が本当に少ないんだそうです。
私たちの親くらいの世代のイタリア人は堅実に貯金をして家を購入してという人がまだいたそうですが、今の時代失業率が高いことや年収が上がらないこともあり、なかなか貯金にまで手が回らないということなのかもしれませんね。
また、前述のように医療にほぼお金がかからないため、医療保険に入る人もいないそう。
医療にお金がかからないというと、どんなことが私たち日本人にはちょっと想像しにくいのですが、例えば盲腸で入院しようとも足を骨折して入院しようとも、手術代も入院費用もかからず、負担するのは一部の内服薬や食事代のみというのですから、うらやましいですね。
あれこれ病気になることを想定して、高い医療保険や死亡保障がついた保険に加入していなければ不安を覚える。そんな私たち日本人とは大違いですね。
イタリア人の日々の金銭感覚
photo by Kristoffer Trolle
意外?現金支払いが少ないその理由は?
意外なことにイタリアは日本よりもキャッシュレス文化が進んでいます。「支払いはbancomat(バンコマット)で」という人が多いそうですが、これはデビットカードのこと。
大雑把なイタリア人はいくら使ったか分からない、後から請求が来るのが恐ろしいというわけでクレジットカードを使う人が少なく、デビットカードで支払いをしている人がすごく多いのだそうです。
このデビットカードはクレジットカードと同様、支払い時に機会に通して暗証番号を押すことで支払いが成立します。ブティックなどのショッピングはもちろん、スーパーマーケットもこのデビットカードで支払う人がほとんどなのだそう。
「その割におしゃべりしているからレジが遅い」と友達は怒っていましたが…。
イタリア人が毎日飲む、カフェやカプチーノのお値段は
このイタリア帰りの友人と会ったとき、夕食を共にした後近くのスターバックスでコーヒーを飲んだのですが、コーヒーのカップを手に取りながら友人がしみじみと
「日本はコーヒーが高いよなぁ」とつぶやきました。
イタリアでコーヒーといえば、小さなカップで出てくるエスプレッソを指すそうですが、このエスプレッソの値段は高くて1ユーロ、地方都市だと80セントくらいで飲めるところが多いそうです。
日本で人気のカプチーノはイタリア人は朝しか飲まないそうで、こちらのお値段も1.5 ユーロぐらいが相場。
彼は「日本にいた頃は朝食に甘いものなんて考えもしなかったけど、イタリアのカプチーノとチョコレート入りのクロワッサンという定番朝ごはんが懐かしいよ」と遠い目をしてつぶやいていました。
現金払いに限度額がある理由
海外に出かけるとき、私たち日本人にとってクレジットカードが必須になるというのは防犯上の理由でもあるのですが、実は、もうひとつクレジットカードを持っておいたほうがいい理由があります。
それは現金払いに限度額があるということ。
例えばイタリアでは999ユーロが現金で支払う限度額で、それ以上の金額はクレジットカードかデビットカードでの支払いしかできないそうです。
これはミラノやローマの高級ブランド店でも同じなので注意してください!とのこと。
これはマネーロンダリング(資金洗浄)や脱税を防ぐためのもの。EU圏内の国々の多くが限度額を設けているそうなので、出かけるときは事前に確かめておきましょう。
また、クレジットカードも必ず身分証明書(外国人観光客の場合パスポート)の提示と暗証番号の入力が求められるそうなので、出かける時は忘れずに!です。
ポイントやキャッシュバック制度などはほとんどなし
イタリアではクレジットカードを持つ人があまりいないことから、ポイント制度やキャッシュバック制度のようなものもほとんどないそうです。
ポイントを貯めるのにためにクレジットカードを選ぶと言うと、ちょっとびっくりされるそう。
ポイント大好きの私には考えられませんね!
先日、この友人のところにイタリアから同僚が遊びに来たそうなのですが、友人がクレジットカードやポイントカードなどを駆使しているところを目にして、「日本は物価が高いと思ってたけどいろんなお得な制度があるんだな」と感心していたそうです。
聞けばイタリアの消費税は20%と日本よりもずっと高め。
家賃や交通費など生活にかかるお金はイタリアより高い日本ですが、日本の方がお得にできることもたくさんあるようで、少しホッとしました!